鼻から噴霧するインフルエンザの生ワクチン(フルミスト)について
フルミストは、簡便で痛くもなく、本物のインフルエンザウィルス(但し毒性を弱めたもの)を使っているため、重症化予防効果だけでなく、鼻粘膜での局所免疫(IgA抗体)も誘導される事による発症予防効果もあり、効果も約1年持続すると、理論的には従来の注射の不活化ワクチンよりも優れた点が多いですが、本物のウィルスを用いているため、次のようなデメリットもあります。
まず、本物のウィルスなので、ステロイドなどの免疫を抑えるような薬を使ってらっしゃる方などには接種できません。
接種後はインフルエンザにかかったようになることがあり、2週間以内に6%(17人に1人)くらいの方に38℃以上の熱が出ます。鼻水・鼻詰まりなどの風邪症状も多くの方(6割くらい)に見られます。
本物のウィルスなので、周りの人にうつることがありますから、接種後2週間は免疫不全の方との接触を避けていただくのがお勧めです。
接種後2週間以内に抗インフルエンザウィルス薬(タミフル等のインフルエンザウィルスの増殖を抑える薬)を使うと、フルミストの効果が弱くなる可能性があります。
フルミストの接種後2週間くらいはインフルエンザの抗原検査が陽性になることがありますから、発熱などで医療機関を受診される場合は、フルミストを何月何日に接種したとおっしゃってください。
また、年齢が2歳以上18歳以下と限られていることや、お値段が高いというのも欠点です。ただ、お値段に関しては、従来型の注射のワクチンの場合2回接種が推奨される6か月以上13歳未満の小児の方では、2回接種のお値段と1回で済むフルミストのお値段はほぼ同じですから、発症予防効果を考えるとフルミストのほうがお得と思われます。13歳以上19歳未満の方は、発症予防効果を考えるとフルミストのほうがお勧めですが、効果は約1年持続しますから、試合や試験など大事なご予定のある1カ月前にはフルミストを接種されるのがお勧めです。
接種にあたっては、前述の免疫抑制状態の方だけでなく、重度の喘息をお持ちの方や、アスピリンなどのNSAIDsをお使いの方は接種できないことがありますから、予診票を必ずお書きの上、接種の際にお持ちください。
なお、フルミストも従来からある注射型不活化ワクチンも、中身の株は同じで、2025年製造のワクチンは、A型2種類とB型1種類が入っています。